goki アコースティックライブ バナー
十弦

Jernigan School of Steel Guitar

 

1990年代後半、ロサンゼルスに住んでいた僕はカントリーにハマっていました。
そんなある日ルームメイトから見せられたダイアー・ストレイツのライブ・ビデオ。
そこでペダルスティールを弾いていたのは名手ポール・フランクリンでした。
彼の演奏を見た瞬間から僕はペダルスティールの魅力に憑りつかれます。

 

それからまもなく Sho-Bud 製のシングルネックのペダルスティールを購入。
ところが弾き方が分からないうえに、周りに教えてくれる人も見当たりません。
困り果てた僕はとりあえずナッシュビルまで先生を探しに行くことにしました。

 

現地で最初に行った楽器店ではペダルスティールが売られていませんでした。
ナッシュビルやったらどこの楽器店でもあると思い込んでいた僕はビックリ・・・
そこで店員さんに事情を話してみたところめっちゃ有益な情報が!
「それなら Steel Guitars of Nashville に行くといいよ」
そこはその名のとおりペダルスティールの専門店とのこと。
僕はすぐに Steel Guitars of Nashville へとレンタカーを走らせました。

 

Steel Guitars of Nashville で僕を迎えてくれたのは店長のボビーでした。
僕の説明をひと通り聞き終えた彼の顔には大きな笑みが。

 

「君は本当に運がいいね。いまナッシュビルには最高の先生がいるよ。
   彼の名前はダグ・ジャーニガンっていうんだ。
   長年 Grand Ol' Opry バンドの専属スティール奏者だったんだよ。
   最近一線を退いて今は後任を育てるために教室を開いているんだ。
   もし良かったら、いま君がレッスンを受けれるか彼に聞いてみようか?」

 

僕はキツネにつままれたような気分で「お願いします!」と即答。
するとボビーはすぐにダグに電話をかけてくれ、2人の会話が始まりました。
(電話口の向こうのダグの声は聞こえへんかったんで僕の想像です。)

 

ボビー:ダグ、うちにペダルスティールを習いたいっていう日本人が来てるんだ。
ダグ:日本人?彼は英語を話せるのかい?
ボビー:彼の英語は俺たちより上手いぜ(笑)。
ダグ:ハハハ(笑)。いまちょうど時間が空いてるよ。
         〇〇〇 まで迎えに行くから、そこに来るように伝えてくれるかい?
ボビー:ありがとう。すぐに彼を 〇〇〇 まで案内するよ。
ダグ:オッケー。じゃあ、また後でな。

 

電話を切ったボビーが笑顔で僕に言いました。
「ダグが教えてくれるってさ!すぐに行こう」
信じられへん展開に驚きながら「ありがとうございます!」と答える僕。

 

まもなくボビーの車に誘導してもらって待ち合わせの場所に到着。
そこにはすでにダグが乗ったピックアップ・トラックが止まっていました。
ダグと挨拶を交わしたボビーはそのまま店に戻ることに。
僕がお礼を言うと、ボビーは「グッドラック!」と言い残して帰って行きました。
と次の瞬間ピックアップ・トラックから降りて近づいてきたダグから僕に質問が。

 

ダグ:やあ、ペダルスティールを習いたいってのは君かい?
       (実際の言葉は忘れもしない "Are you the man?" でした。)
僕:はい、そうです。
ダグ:レッスンは1時間40ドルだけど大丈夫かい?
僕:はい、もちろんです。
ダグ:よし、俺に付いて来な。

 

田園風景を眺めながら車を走らせているうちにダグの自宅兼教室に到着。
彼の後について中に入った僕は生徒用のペダルスティールの前に座りました。
「君はペダルスティールを弾いたことがあるのかい?」とダグ。
「持ってはいるんですが、何をどうすればいいのかさっぱり分からなくて・・・」
「ハハハ(笑)、じゃあ、今日はまずは基本のメジャースケールを練習しよう」
僕はダグに教えてもらいながらひたすらメジャースケールを弾きました。

 

1時間経ってレッスンが終わりに近づいたとき、ダグが言いました。
「レッスンはそろそろ終わりだけど、何か質問はあるかい?」
超初心者やった僕は何も質問が思いつきませんでした。
そこで「少しだけダグの演奏を聞かせていただけませんか?」とリクエスト。
彼は笑顔で「オッケー」と答えて徐にペダルスティールを弾きはじめました。

 

そこで彼が弾いた演奏が何やったのか僕はまったく覚えていません。
ただ彼の手と足の動きとサウンドがあまりにもスゴすぎて呆然・・・
その場で即「この楽器は自分には無理!」っちゅう結論に達しました(笑)。

 

「ナッシュビルに来たらいつでも教えてあげるよ。また連絡してくれよな」
自宅の玄関口で僕を見送ってくれたダグの笑顔が忘れられません。

 

それからしばらくして日本に帰った僕は板橋区に住みはじめました。
貧乏生活を続けていたある日、ポストの中に板橋区役所からの手紙を発見。
封を切ると1年間滞納していた区民税の督促状(赤字 & 太字)でした。。。
まとまったお金が必要になった僕はすぐにペダルスティールを売ることを決意。
都内にあったカントリー系楽器の専門店に行って引き取ってもらいました。

 

ペダルスティールを手放してから約20年が経った先月。
僕は幸運にもディッキー北農さんと共演させていただく機会に恵まれました。
実は北農さんこそ、その楽器店の店長さんやったんです!
あのとき無事区民税を払い終えた僕はその後「円満退都」で神奈川に引っ越し。
今も平々凡々と呑気に暮らしています。

 

(写真:ダグのレッスンでもらったタブ譜、ダグの名刺、ボビーの名刺)

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